ピクトグラム/アイコン/マーク/シンボル…その違いを歴史で紐解きお届けします!

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見た目がそっくりなピクトグラム/アイコン/マーク/シンボル。それぞれの違いを歴史を元にひもときました。ピクトグラムと言語の関係性、アイコンだけで意図は伝わるか、ロゴマークとロゴタイプの違い、キリストを想像させるシンボル十字架、などに触れてます。ぜひお楽しみください。

世界共通語!カタチの言語「ピクトグラム」

ピクトグラムは「世界共通(カタチの)言語」です。言葉に近い存在で、整理されたルールと無駄を省いた形を持ちます。学習せずとも何を指し示すのか解る形を目的に作られました。

普及のきっかけ!1964年 東京オリンピック

1964年 東京オリンピックでプロデューサーを務めた勝見勝さんが取り入れたのがピクトグラムです。今まで英字だった案内を「国境や年代を超えて誰が見てもわかる図(=ピクトグラム)」に変え、世界の注目を集め広がるきっかけとなりました。(もともと限定的な役割で使われることはあったのですが) 制作には勝見さんを中心に12名ほどのデザイナー(田中一光さんや粟津潔さん、山下芳郎さん、他、実力ある若手デザイナー)が携わりました。 pictjapan 画像引用元:SIGN,ICON and PICTOGRAM―記号のデザイン

1972年 ミュンヘンオリンピックで完成形に

今だからこそ言えますが1964年製のピクトグラムはまだアイコン(絵)に近く、ピクトグラム(言語)とは言い切れませんでした。 1964年 東京オリンピックでの活躍が話題となり、革新的発明としてピクトグラムはその後のオリンピックに引き継がれ、より明確な形となります。 1972年ミュンヘンオリンピックの競技アイコンを見れば一目瞭然ですが、曲線、直線、円など、形式全てがルール化されています。 この形が完成形と言う専門家もおり、歴史上で見ても唯一オリンピックで二回使われた経歴や、これをベースにアレンジされた大会もありました。 pictmyunhen-1 画像引用元:SIGN,ICON and PICTOGRAM―記号のデザイン

アイコンは対照の物(外観)事(概念)の記号化

アイコンの立ち位置は「類似記号」です。(記号評論家パースさんの作った概念を元に言ってます) 外装でも性質でも構わない、対象と似た性質を持つか模倣したものを指す。とされています。ちなみに形を模倣しても意思の疎通には事足りない場合もあります。

アイコンは言葉の補足や事前知識が必要なものもある。

「フロッピーディスク=保存」を未だに見かけますが、今の子供に伝わるでしょうか? 犬のアイコンだけだと、狂犬注意か犬の散歩ゾーンか犬を飼っている表示か判断しかねます。ですが、文字と合わせば伝わります。 文字で表すならば記号はいらないのでは?という意見も出そうですが視覚から入る情報は受け手にとって入りやすく、効果的に使えば直感的で楽な場合もあるのです。

記号評論家パースが記号の概念や定義を作った

アイコンやシンボル(そしてインデックス)の概念を作った記号評論家(論理学者、数学者、哲学者、科学者)のチャールズ・サンダース・パースさんは記号に対して3つの分類「記号・対象・表現目的」とそれぞれにたいする3つのパラメータ(性質・事実・法則)、合計9つの区分を1904年に行っています。これにより記号のタイプ分けと定義を行いました。それぞれの区分は関連性を持っています。 その表がどの資料を見てもとても難しく、私なりに解釈し、柔らかく表現したものをこちらに用意しました。 表内A-Iで表現している関連性によって複数の区分をもつこともあります。それにより10種のクラス分けができますが、話が膨らみそうなので、もっと知りたい方はこちら(ebikusuの博物誌)へぜひ。10種のクラスの解りやすい解説をされてます。 icon-chart
補足ですが、アイコンはコンピューターと共に産まれたという記事もみかけました。特段多いのはMacintoshとスーザン・ケアさんに関する記事です。(この場合は「コンピューターにおけるアイコンの概念」であれば正解かと。) ここではMacintoshは1980年生まれ、さらに深堀すると1970年にゼロックス・パロアルト研究センターがアイコンを取り入れたグラフィカルユーザインタフェース(Graphical User Interface、GUI)を初めて開発したという資料を踏まえて、より古くから「概念」を表しているパースさんの資料を基盤にしています。

象徴するものを表すシンボル

シンボルとは象徴です。イメージできる概念があってこそ、シンボルとして成り立ちます。(記号評論家パースさんの作った概念を元に言ってます) 書籍「図説 サインとシンボル」では何かを象徴するものが絵や図や形となりシンボル化していく過程が描かれているのですが、その一例をこちらに挙げます。 例えばキリストを示すシンボルは「張り付けられたキリスト本人」ではなく、「十字架(キリストがはりつけられたもの)」です。 そこに概念があり、その概念をイメージさせる形こそシンボル(象徴)です。 逆に、なんの概念もない十字はシンボルとは言えないでしょう。

シンボルマーク/シンボル/絵/その差について

「子供を抱いた母の絵」も「聖母」として捉えるならシンボルと呼べます。ただし絵は情報量(色や線)が多く、マーク(記号)とは言えません。よってシンボルマークと言うのは少しずれています。 また「子供を抱いた母の絵」も「聖母」として捉えられないならば、象徴するものが無いので、それはシンボルとは言えません。 symbol 画像引用元:図説 サインとシンボル

記号・符号・しるし・標章・図案「マーク」

下記の引用の通り、シンボルは意味や概念を持つ形として広く使われています。
人間により作られた、記号・符号・しるし・標章・図案等のこと。文字そのものはマークとは言わないが、図案化・装飾化した場合にはマークと呼ばれることがある。マークは、ある意味や概念を示すために用いられる。逆に、意味や概念を示していない場合には、それは、模様でしかない。 -wikipedia
さて、ここで掘り下げたいのが冒頭の「文字そのものはマークと言わないが」という言葉です。私たちデザイナーが普段よく使う「ロゴマーク」について細かく区分けしました。

ロゴタイプとロゴマーク

ロゴタイプ

「文字のみ」を図案として形にしたものを指します。団体名や商品名、雑誌名、様々なところでそのものを伝える文字の形です。コーポレートロゴでこの形をとるところもあります。

ロゴマーク

ロゴとマークが混ざった形です。ロゴタイプに図形が入り込めばロゴマークと言って間違いありません。

ロゴ+マーク

ロゴとマークが別々に存在する状態です。厳密に正しい表現を行うならばロゴタイプ+マークになるでしょう。絶対同時に使うならロゴマークですが、分けて使えるものならばマークとロゴタイプと考えていいでしょう。 ロゴマークのように特にシンボルとなる記号又は図柄は、シンボルマークとも呼べます。例えば、黄色いMのマークを見るとマクドナルドを思い出しませんか?これはあるものから、別のあるものを思い出させる象徴となる形です。 複雑ではありますが、形状に意味を持たせること、意味をもつ形状を作ることで効果をちゃんとだす事が私たちの仕事なので是非とも意識したい部分です。

マーキングがマークへ変わり、価値を産む。

このようなお話しが「図説 サインとシンボル」のなかにあります。 昔酪農家が所有という意味で「飼い牛」につけた刻印がありました。それは市場に出て初めて意味が出たそうです。いい牛はそのマークを取引業者に知られ、ブランド品として競って求められ高値の価値で売れるのです。 マークとは「何かの意味を持ち、どこのものか表し、価値を創出する」側面があるのです。

アイソタイプという記号の原型

さて、最後に歴史的発明でありながら、あまり聞かない「アイソタイプ」についてお話ししたいです。 アイソタイプは、子ども向けに言葉が分からなくても一目で情報が理解できるよう考案されましたが、そのわかりやすさから統計データの数量比較として広く使われるようになった記号です。1920年にオーストラリアで、哲学者のオットーノイラートさんが発明した記号こそが「アイソタイプ」です。グラフィックデザイナーのゲルト・アルンツさんが具体化しました。 isotype

ピクトグラムの原型、インフォグラフィックのルーツ

アイソタイプを用いでデータを解りやすく図表化するアイデアは、現在海外のwebサイトでもトレンド化しているインフォグラフィックのルーツとなっています。 また、一目で情報が理解できる機能を持つ考え方は、ピクトグラムの原型です。

デザインには意図がある、それを深めるほど明確になる。

デザインは目的を達成するためにあると信じているので、今回紹介した記号に、それぞれの理由があり、できた歴史があることが面白かったです。作り手として理解したいカタチの裏側だとしみじみ感じました。 私も理解するのに時間がかかった部分が多く(アイコンとか、パースさんの図とか…)、解説もやや難しいかもしれませんが、読んでくださったみなさまの知識として役立てばうれしいです。 この記事を書くきっかけになった。「ロゴがすべての基盤になる。1964年東京オリンピックの革命」もよかったらお楽しみください。
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たじま ちはる

画像:たじまちはる

マーケティングとデザイン

ヒトとモノとコトを最適な形で伝えるために、戦略、マーケティングを理解し、目的を達成するためのデザインを行う。
デザインの設計という面を伝えること、デザインとその周囲をつなげていくために、登壇や個人メディアでの発信にも力を入れている。